犬の噛み癖は、子犬は甘噛みなのでかわいいものですが、成犬になっても噛みつき癖が治らないと重大な事故(咬傷事故)にもつながります。
咬傷事故が起きると、被害者への賠償もさることながら、手に負えないと判断し、安易に犬の殺処分を選ぶ飼い主もいるようです。
今回は、成犬時における噛み癖を説明いたします。
悲しい結末になる前に噛みつきの原因を把握し、しっかりとした、しつけで改善をしましょう。
重大な事故につながりやすい犬の噛みつきは、主に成犬の噛み癖によるものです。
成犬の場合、小型犬でも本気で噛みつけば、危険な咬傷事故を引き起こすことがあり、中型・大型犬では重傷・死亡など深刻な事故になる可能性があり、飼い主には賠償責任を含めた重い法的責任を負うことになります。
手遅れになる前に、専門家への相談も含め検討することが重要です。
こうした噛みつきの主な原因は以下のようになります。
性格・環境どちらも、原因が根深いため、中途半端なしつけを行ったり、問題の放置をせず専門家に相談することをお勧めします。
主に、性格的に臆病な犬や過去虐待されていた環境にいた犬が起こしやすい噛みつき
です。
縄張りや家族を守るための攻撃です。犬は縄張り意識の強く群れで暮らす犬ため、どの犬種でも、外部の人間・動物には一定の威嚇をします。
来客に対しての噛みつきや、散歩中での他の犬への噛みつきがこれに該当します。
ペット保険最大手アニコム損保の2011年の調べでは、柴犬、秋田犬が防衛による他の犬への噛みつきはとくに多く、飼い主に忠実といわれる性格が、他の動物との思わぬ事故に繋がっていることが推察されています。
解決には、動物病院やトレーナーなど専門家への相談・連携が必要です。
性格に関しては、日々の行動をよく観察していれば何が原因で噛みつくのかが、見えてきます。自宅での基本的なしつけで解決できるケースもありますが、中型犬・大型犬や噛み癖がひどい場合は、深刻な事態になるまえに専門家と連携し対策を考えましょう。
虐待などのトラウマを抱えているは、保護犬や捨て犬が多く、保護犬の場合は、迎え入れる際にどういった背景で保護されたのかよく確認しましょう。
保護施設では、温和な状態に回復していても、新しい環境で再発することもあります。改善するまでに長い時間が必要になることも多いので、気長に接していきましょう。
犬の噛みつきの多くは、しつけの失敗・飼い主のリーダーシップの欠如にあります。
こうした行動は子犬から成犬までの大切な社会化をする時期に甘やかす・放置されている・ただしかりつけるなどの間違ったしつけをしたことで発生します。
問題解決には、いわゆる「再しつけ」が必要になります。
群れの中での優位性を示すための噛みつきです。
原因としては、飼い主や家族がリーダーをして認められていないことが原因です。
特定の家族にだけ、噛みつくことや、小屋のおもちゃ、食事を出した時に体を触ると噛みつくなどが、この例に該当します。
他の犬とのけんかを仲裁したさいに噛まれるなどが主な例です。
興奮する前に抑止が聞かないという状況が根本的な問題で、飼い主がリーダーとして認められていない可能性があります。
どれだけの期間、噛みつき癖があったのかによって、再しつけの難易度は変わります。
まずは飼い主自身がしつけ方法を身に着ける必要があり、ドッグトレーナーに相談しましょう。
その中で、噛みつきが軽度の場合は、以下のようなしつけ方法を紹介されます。
●子犬のしつけと同じように犬の要求がある場合、お座りや待てといった基本動作を繰り返すことで、主従関係を再構築する作業を繰り返す。
●外出や散歩中の噛みつき防止のためマズルに圧力がかかるヘッドカバーや、ヘッドカバーよりも犬にストレスがかかるためあまりお勧めできませんが、口輪の装着も検討。
など
ただし状況が悪化した関係性の場合は、こうした基本動作のしつけすら困難な場合があります。
その場合、動物の臨床行動学の専門家や獣医行動診療科認定医に相談し指示に従いしつけをすることをお勧めします。
東京
荒田明香先生(東京大学動物医療センター行動診療科,ACプラザ苅谷動物病院)
藤井仁美先生(V.C.J.代官山動物病院行動診療科)
水越美奈先生(日本獣医生命科学大学動物医療センター行動治療科)
新潟
白井春佳先生(にいがたペット行動クリニック)
兵庫
村田香織先生(イン・クローバー,もみの木動物病院)
千葉
和田美帆先生(ファミリー動物病院)
温和な犬の性格が急に変わり噛みついてくる、年を取ってから急に狂暴になったなどの場合、犬の体調の不調による噛みつきの可能性があります。
普段おとなしい犬が急に噛みついてくる場合、体の不調を疑いましょう。
特定の部位に触ったときに噛みつく場合は患部に強い痛みがあると考えられます。
これまで上げた①~②も含め原因を検証してもわからない場合、脳の疾患
(てんかん・腫瘍)や老犬だと痴ほうが原因の場合があります。
基本的には、動物病院で検査を受け、病気・ケガを治療し、原因が取り除かれれば、改善していきます。
ただし、てんかん、痴呆症に関しては、根治は難しく症状を抑え緩和していくことを考えましょう。
これらの異常を発症初期段階で気づくことができればベストですが、中々気づくことができないケースも多くあります。
普段から健康診断を受けたり、犬とのスキンシップをとり、状態を把握するように努めましょう。とくにスキンシップは、犬との良好な関係を築くことにも重要な役割を果たします。また、スキンシップの中で築いた信頼関係があれば、他のしつけも比較的容易になります。
他のしつけにも共通することですが、飼い主がしつけを焦り、犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になり、噛みつき癖が悪化することもあります。
一般的に犬の集中力は10分~15分ほどといわれております。10分~15分を目安に、集中が切れてきたと感じたら、しつけを中断し、時間を改めて実施しましょう。
朝夕晩1回づつ、集中的に実施するとルーティンになり効果的です。
また、噛み癖を解決する方法として避けたいのは犬歯切断です。これは犬の歯を半分程度に切断する外科手術ですが、安易な解決策でお勧めできません。
歯がなくなったことに安心し、しつけ自体を放棄するケースも多く、さらに歯を削ったことによるかみ合わせの悪化など犬の健康にも影響がでます。
犬の噛み癖は、特に成犬時は重大な事故になりやすく、被害者や責任を負う飼い主の損害も大きなものです。
ただし、噛む行為自体は、犬の本能(原始的なコミュニケーション方法)ですので、完全に抑えることは不可能なのです。
しつけでいかに抑制できるかがポイントになりますが、成犬時の噛み癖のしつけは難易度が高いため、中途半端なしつけや放置などせず、できる限り早くかかりつけの獣医師や専門家に相談しましょう。
早期対応によって、愛犬も飼い主も幸せな生活が送れるようになります。
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